
アルミの熱伝導率はどのくらい?
アルミの特性を理解する上で、熱伝導率は重要な指標です。まず、熱伝導率の基本的な意味と、アルミが持つ具体的な数値について解説します。熱伝導率とは何か
熱伝導率とは、物質内での熱の伝わりやすさを示す指標です。この数値が大きいほど、熱が速く伝わることを意味します。単位は「W/m・K(ワット・パー・メーター・ケルビン)」で表され、物質の種類や状態によって値は大きく異なります。一般的に、金属は熱伝導率が高い傾向にありますが、その中でも金属の種類によって差があります。この特性は、製品の冷却や加熱の効率に直接影響するため、材料選定において非常に重要な要素です。アルミの具体的な熱伝導率の数値
純アルミニウムの熱伝導率は、約237 W/(m・K)です。これは、鉄(約67 W/(m・K))の約3.5倍、ステンレス(約16 W/(m・K))の約15倍にもなる高い数値であり、金属の中でも特に熱を伝えやすい素材であることがわかります。この「熱しやすく冷めやすい」性質が、アルミの大きな特徴の一つです。ただし、この数値は純アルミの場合であり、強度を高めるために他の元素を加えたアルミ合金では、熱伝導率が少し低くなる傾向があります。詳しい情報はこちらです。
他の金属とアルミの熱伝導率を比較
アルミの熱伝導性の高さをより深く理解するために、他の主要な金属材料と比較してみましょう。代表的な金属との比較を通じて、アルミの立ち位置を明確にします。金属の熱伝導率ランキング
さまざまな金属の中で、アルミはどの程度の熱伝導性を持つのでしょうか。以下は、代表的な金属の熱伝導率を高い順に並べた表です。材質 | 熱伝導率 (W/m・K) |
---|---|
銀 | 420 |
銅 | 398 |
金 | 320 |
アルミニウム | 236 |
真鍮 | 106 |
鉄 | 67 |
チタン | 17 |
ステンレス (SUS304) | 16 |
この表から、アルミは銀や銅には及ばないものの、工業材料として広く使われる金属の中では非常に高い熱伝導率を持つことがわかります。
アルミと鉄の熱伝導率の違い
前述の通り、アルミの熱伝導率は鉄の約3.5倍です。この差は、調理器具や冷暖房装置など、熱を効率的に伝える必要がある製品において大きな利点となります。例えば、アルミ鍋が素早く温まるのは、この熱伝導率の高さによるものです。鉄も丈夫で優れた材料ですが、熱の伝わりやすさという点ではアルミに軍配が上がります。詳しい情報はこちらです
アルミと銅の熱伝導率の違い
銅はアルミよりもさらに高い熱伝導率(約398 W/m・K)を誇ります。そのため、精密な電子機器の配線や放熱部品など、最高の熱伝導性が求められる場面では銅が使用されることがあります。しかし、アルミは銅に比べて比重が約3分の1と非常に軽く、価格も安価です。このため、重量やコストが重視される製品、例えば送電線や大型の熱交換器などでは、アルミが有利となる場合が多くあります。アルミの熱伝導性が高い理由
なぜアルミはこれほどまでに熱を伝えやすいのでしょうか。その理由は、金属内部の構造と、添加される元素の種類に関係しています。自由電子の動きが活発
金属が熱をよく伝えるのは、内部に「自由電子」と呼ばれる、原子間を自由に動き回れる電子が存在するためです。熱が加わると、この自由電子が活発に動き回り、熱エネルギーを次々と隣の電子や原子に伝えていきます。アルミは、この自由電子が特に動きやすい性質を持っているため、優れた熱伝導性を発揮するのです。一般的に、電気をよく通す金属ほど、熱の伝導率も高い傾向にあります。純度や合金の種類による影響
アルミの熱伝導率は、その純度に大きく影響されます。純度99.99%以上の高純度アルミニウムが最も高い熱伝導率を示します。しかし、純アルミは強度が低いため、通常はマグネシウム(Mg)やシリコン(Si)などの他の元素を添加した「アルミ合金」として使用されるのです。これらの添加元素は自由電子の動きを妨げるため、一般的に合金の熱伝導率は純アルミよりも低くなります。例えば、強度が高いジュラルミン(2000番台)は熱伝導率が低く、比較的純アルミに近い1000番台や、押出加工性に優れる6000番台は高い熱伝導率を維持しています。熱伝導率以外のアルミの熱的特性

熱に関する性質は熱伝導率だけではありません。「比熱」や「熱容量」といった他の特性も、材料の挙動を理解する上で重要です。
温まりにくさを示す「比熱」
比熱とは、物質1gの温度を1℃上げるのに必要な熱エネルギーの量を示す値です。この値が大きいほど、その物質は「温まりにくく、冷めにくい」性質を持つことを意味します。アルミの比熱は917 J/(kg・K)で、鉄(456 J/(kg・K))や銅(386 J/(kg・K))など他の主要な金属と比較して高い値です。これは、アルミが一度温まると、その熱を保ちやすい性質を持っていることを示しています。熱の蓄えやすさを示す「熱容量」
熱容量は、物質全体がどれだけ熱を蓄えられるかを示す指標で、「質量 × 比熱」で計算されます。アルミは比熱が高いものの、比重が小さく軽量なため、同じ体積で比較した場合の熱容量は、鉄や銅よりも小さくなることがあります。一方で、アルミホイルのように薄く加工されたものは熱容量が極端に小さく、すぐに熱が逃げていきます。熱しやすく冷めやすいというアルミの性質は、熱伝導率の高さと、製品形状による熱容量の小ささが組み合わさって生まれる特性です。アルミの熱伝導性を活かした用途

アルミの優れた熱伝導性は、日常生活から産業分野まで、幅広い用途で活用されています。ここではその代表的な例を紹介します。
調理器具(鍋、フライパン)
アルミ製の鍋やフライパンが素早く温まり、食材に均一に火を通せるのは、まさしく熱伝導性の高さのおかげです。鉄やステンレスの鍋に比べて軽量で扱いやすい点も、調理器具として広く普及している理由の一つです。飲料缶
ビールやジュースなどの飲料缶にアルミが使われるのは、冷蔵庫に入れると中身がすぐに冷えるからです。熱伝導率が高いため、外からの冷気が素早く内部の液体に伝わります。また、軽量でリサイクルしやすい点も飲料缶の素材として適しています。電子機器の放熱部品(ヒートシンク)
パソコンのCPUやLED照明など、作動中に高温になる電子部品の冷却には、ヒートシンクと呼ばれる放熱部品が欠かせません。ヒートシンクは、熱源から熱を奪い、空気中に効率よく熱を逃がす役割を担います。アルミは熱伝導率が高く、加工しやすく、軽量であるため、ヒートシンクの材料として最も一般的に使用されています。冷暖房装置や熱交換器
エアコンの室内機や室外機、自動車のラジエーターなど、効率的な熱交換が求められる装置にもアルミが多用されています。フィンと呼ばれる多数の薄い板を取り付けた構造にすることで表面積を増やし、熱伝導性の高さを最大限に活かして、効率的に熱の移動を行っています。アルミを利用する上での弱点・注意点
優れた特性を持つアルミですが、万能というわけではありません。使用する際には、その弱点や注意点も理解しておく必要があります。高温環境下での強度低下
アルミの融点は約660℃と、鉄(約1530℃)に比べてかなり低いです。そのため、400℃を超えるような高温環境では強度が著しく低下してしまいます。工業用の炉やエンジン部品など、特に高温になる部分での使用には向いていません。このような用途では、耐熱性に優れた鉄やニッケル、チタンなどが選択されます。溶接加工の難しさ
アルミは溶接が難しい金属としても知られています。融点が低いことに加え、熱伝導率が高すぎて熱がすぐに逃げてしまうため、溶接部分の温度管理が非常にシビアになります。また、表面に強固な酸化皮膜が生成されることも、溶接を難しくする一因です。アルミの溶接には、高い技術と専用の設備が必要となります。まとめ
アルミの熱伝導率は鉄の約3.5倍と非常に高く、工業用金属の中でもトップクラスの性能を誇ります。この「熱しやすく冷めやすい」特性を活かし、調理器具から電子機器の放熱部品、冷暖房装置まで幅広く利用されています。その特性を正しく理解し、用途に応じて適切な材料を選定することが重要です。
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