
製品設計やDIYで重要な材料選び。特に、身近な金属である「鉄」と「アルミ」は、どちらを選ぶべきか迷うことが多いのではないでしょうか。この2つの金属は、強度、重さ、錆びにくさ、そして価格といった点で全く異なる特性を持っています。
この記事では、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく比較し、あなたの用途に最適な材料を選ぶためのポイントを解説します。
鉄とアルミ「どちらを選ぶべき?」基本的な違いを理解しよう
製品開発や設計、DIYなど、様々な場面で直面するのが「鉄とアルミ、どちらの金属を選ぶべきか」という問題です。どちらも身近な金属ですが、その特性は大きく異なります。材料選定を誤ると、コストの増加や品質の問題に直結しかねません。このセクションでは、鉄とアルミの最も基本的な違いである「強度」「重さ」「錆びやすさ」に焦点を当てて、それぞれの特徴を解説します。
一目でわかる!鉄とアルミの比較一覧表
まずは、鉄とアルミの主な特性を一覧表で比較してみましょう。どちらの金属にどのような特徴があるのか、全体像を把握することができます。特性 | 鉄 | アルミニウム |
---|---|---|
比重 | 約7.87 | 約2.7 |
強度 | 高い | 低い(合金で向上可) |
耐食性 | 低い(錆びやすい) | 高い(錆びにくい) |
加工性 | やや難しい | 容易 |
熱伝導率 | 約80 W/(m·K) | 約240 W/(m·K) |
磁性 | あり | なし |
価格 | 安価 | 比較的高価 |
強度が高いのはどっち?
一般的に、純粋な金属の強度を比較すると、鉄の方がアルミニウムよりも高い強度を持っています。そのため、橋梁や建物の鉄骨など、非常に大きな荷重がかかる構造物には鉄が使用されます。しかし、アルミニウムもジュラルミンなどの合金にすることで、強度を大幅に向上させることが可能です。特定の用途では、鉄に匹敵する強度を持ちながら、軽量であるというメリットを活かすことができます。
重さはどれくらい違う?
重さ(比重)は、鉄とアルミの最も大きな違いの一つです。鉄の比重が約7.87であるのに対し、アルミの比重は約2.7と、鉄の約3分の1しかありません。 この「軽さ」はアルミの最大の武器であり、航空機や自動車、鉄道車両など、軽量化が燃費や性能に直結する分野で広く採用される理由となっています。錆びやすいのはどっち?
耐食性、つまり錆びにくさにおいては、アルミニウムが圧倒的に優れています。鉄はご存知の通り、水分や酸素に触れると容易に赤錆が発生してしまいます。一方、アルミニウムは酸素と結合して「酸化皮膜」という非常に緻密で安定した膜を表面に作ります。この膜がバリアとなり、内部の腐食を防ぐため、錆びにくいのです。そのため、アルミサッシや屋外の建材などにも適しています。
材料選びで失敗しないための鉄のメリット・デメリット
古くから人類の文明を支えてきた鉄は、その優れた特性から今なお最も広く利用されている金属材料の一つです。ここでは、鉄のメリットとデメリットを整理し、どのような用途に適しているのかを解説します。鉄のメリット:高い強度とコストパフォーマンス
鉄の最大のメリットは、その高い強度と、資源が豊富で安価に製造できる点にあります。特に、炭素を加えて作る鋼(スチール)は、非常に高い強度と靭性(粘り強さ)を誇り、ビルや橋などの巨大な構造物から、自動車のボディ、機械の部品まで、あらゆる場所でその強度を活かして使われています。鉄のデメリット:重さと錆びやすさ
鉄のデメリットとしてまず挙げられるのが、その重さです。アルミと比較して約3倍の重さがあるため、軽量化が求められる用途には不向きです。また、もう一つの大きな欠点が錆びやすさです。鉄はそのままでは腐食しやすいため、塗装やめっきなどの防錆処理が必須となります。この処理を怠ると、強度が低下し、安全上の問題を引き起こす可能性もあります。
鉄はどのような用途で使われる?
その高い強度とコストメリットから、鉄は以下のような用途で広く使われています。・建築・土木:鉄骨、鉄筋コンクリート、橋梁など
・自動車:フレーム、ボディ、エンジン部品など
・産業機械:工作機械、農業機械、各種装置の構造部品
材料選びで失敗しないためのアルミのメリット・デメリット

「軽い金属」の代表格であるアルミニウム。その特性は軽さだけにとどまりません。ここでは、アルミが持つ多様なメリットと、使用する上で考慮すべきデメリットについて解説します。
アルミのメリット:軽さと優れた加工性・耐食性
前述の通り、アルミ最大のメリットはその軽さです。この特性により、製品の軽量化が可能になり、燃費の向上や持ち運びやすさの向上に大きく貢献します。また、柔らかく加工しやすい点も大きなメリットです。切断、曲げ、溶接などが比較的容易で、複雑な形状の製品も作りやすいです。さらに、表面に酸化皮膜を形成するため耐食性が高く、屋外での使用にも適しています。
(関連記事)アルミの特性について
アルミのデメリット:強度とコスト
純粋なアルミは、鉄と比較して強度が低い点がデメリットです。そのため、大きな力がかかる構造部材には、合金にするなどの工夫が必要になります。また、鉄と比較すると材料自体の価格が高い傾向にあります。精錬に多くの電力を必要とすることなどが、その理由です。
アルミはどのような用途で使われる?
軽さ、加工性、耐食性といったメリットを活かし、アルミは私たちの身の回りの様々な製品に使われています。・輸送機器:航空機の機体、新幹線の車体、自動車のホイールやボディパネル
・建築:アルミサッシ、カーポート、ビルの外壁パネル
・日用品:アルミ缶、鍋、スマートフォンやノートパソコンの筐体
(関連情報)アルミって「どこに」使われているの?(アルミの用途)
強度だけじゃない!比較すべき重要な特性
鉄とアルミを選ぶ際には、強度や重さ以外にも考慮すべきいくつかの重要な特性があります。熱の伝わり方や磁性、加工性の違いを知ることで、より最適な材料選びが可能になります。熱の伝わりやすさの違い
アルミニウムは鉄に比べて約3倍も熱を伝えやすい性質(高い熱伝導率)を持っています。そのため、鍋やフライパンなどの調理器具や、エンジンのラジエーター、パソコンのヒートシンク(放熱板)など、効率よく熱を伝えたり、逆に熱を逃したりしたい製品にアルミが使われます。電磁気への影響は?磁性の違い
鉄は磁石にくっつく性質(磁性)を持っていますが、アルミニウムは磁性を持ちません。この違いは、製品によっては非常に重要になります。例えば、磁気の影響を避けたい医療機器や電子機器の部品には、非磁性であるアルミニウムが選ばれます。加工のしやすさとその方法
アルミニウムは柔らかく、融点が低いため、鉄に比べて「塑性加工(力を加えて変形させる加工)」がしやすいという特徴があります。複雑な形状の形材を押し出して製造できるのは、アルミならではのメリットです。一方、鉄は硬く強度が高いため、加工にはより大きな力が必要となります。
溶接の難易度は大きく異なる
意外に思われるかもしれませんが、一般的にアルミの溶接は鉄の溶接よりも難しいとされています。これは、アルミの融点が低い(約660℃)のに対し、表面の酸化皮膜の融点が非常に高い(約2000℃)ことが一因です。溶接時にはこの頑固な酸化皮膜を除去する必要があるほか、熱伝導率が高いため熱が逃げやすく、溶け落ちなどの不具合が起きやすいのです。異種金属である鉄とアルミの溶接はさらに難易度が高く、特殊な溶接方法が必要となります。
【用途別】鉄とアルミの最適な使い分け

これまで見てきたように、鉄とアルミはそれぞれに得意な分野と不得意な分野があります。このセクションでは、具体的な用途を例に挙げながら、どのように使い分けられているのかを見ていきましょう。
建築材料としての比較
建築分野では、強度とコストが重視される建物の骨格部分(鉄骨)に鉄が使われます。一方、アルミはその軽さと耐食性から、窓サッシやドア、カーポート、ビルの外壁パネルなどに広く採用されています。デザインの自由度が高い点も、外観に関わる部分でアルミが好まれる理由の一つです。自動車・輸送機器部品としての比較
自動車業界は、鉄とアルミがそれぞれの特性を活かして使われている代表的な分野です。衝突時の安全性を担うフレームの基本骨格には、高強度な鉄(高張力鋼板など)が使われることが多いです。一方で、燃費向上のための軽量化が至上命題であるため、ボンネットやドア、ホイール、エンジン部品の一部などには、アルミ合金が積極的に採用されています。
DIY・個人の製作物での選び方
DIYで鉄やアルミを使う場合、加工のしやすさが重要なポイントになります。切断や穴あけ、曲げ加工などを手工具で行う場合、柔らかく加工しやすいアルミの方が扱いやすいでしょう。軽量なため、作業台や棚などを作る際にも取り回しが楽です。一方、強度が必要なものや、アンティーク調の重厚な雰囲気を出したい場合には、鉄を選ぶのが適しています。ただし、錆対策として塗装などの表面処理を忘れずに行う必要があります。
まとめ:目的を明確にして最適な材料を選ぼう
鉄とアルミは、どちらが一方的に優れているというわけではなく、それぞれに異なる優れた特性を持っています。・鉄: 高い強度と優れたコストパフォーマンスが魅力。重構造物や強度が最優先される部品に適しています。
・アルミ: 軽さと加工性、耐食性が最大の武器。軽量化が求められる製品や、複雑な形状のもの、錆を避けたい用途に最適です。
材料選びで最も重要なのは、「何を作るのか」「その製品に最も求められる性能は何か」を明確にすることです。強度、重さ、コスト、耐食性、加工性など、様々な要素を天秤にかけ、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解することで、最適な材料選定が可能になります。

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